歯のコラム
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セラミック治療を考えている方へ
2024.11.01
セラミックの性能について考えてみましょう
セラミック治療というと今はかなり市民権を得てきた治療だと個人的には思います。しかし巷の歯医者さんの口コミで低評価を付けられているのを見るとセラミックに関することが多いとも思います。「すぐに欠けてしまった」「割れて外れてしまった」「治療したばかりなのに再治療に費用がかかると言われた」といった治療に関するものや「銀歯じゃ治せないからと高額なセラミック治療を薦められた」「何本も虫歯があるので総額100万以上かかると言われた」「断っても何度もセラミック治療の話をされた」という費用に関するものなど色々なものがあります。高額なものは医科や歯科の治療以外でも買い物やサービスといったものでもトラブルになることがありますので特に歯科に限ったことではないのですが、治療を受ける側も治療を行う側も注意して行うことが必要だと思います。
治療を行う側からするとトラブルを避けるために技術の研鑽と治療方針のご説明が非常に大切だと思っています。欠けてしまった、割れてしまった、といったケースでは色々な要素を元に治療計画を立てる必要があったかもしれません。セラミックと一言でいっても、実は様々な種類があります。症例に応じて硬さや色合いなどの違うセラミックを選んで治療することが大切です。
自分の歯と同じくらいの硬さのセラミックの利点
セラミックは色々な種類がありますが、一般的なものとして自分の歯と同じくらいの硬さのものがあります。銀歯のつめものが長持ちしない理由として歯と硬さが違うというものがあります。長く使っていると歯はすり減ってきます。同じ人であっても若い頃の歯と歳を取ってからの歯は様子が変わっています。長く使うことですり減って平らになっていきます。歯は常に強い力がかかっているためです。食事を摂るとき、仕事中に食いしばる時、寝ている時の歯ぎしり、などにより歯には力がかかりすり減ります。銀歯のつめものは硬いためすり減らず歯がすり減ることによって隙間が生まれ、内部に唾液や細菌が入っていくことで銀歯が外れたり内部が虫歯になってしまったりすることは良くあることです。銀歯のつめものの治療は保険診療で行う場合、非常に安価で短期間で行うことができますが、再治療前庭の治療だと言えるかもしれません。
一方でセラミックでの治療は長期に渡ってつかうことができることが出来るということが利点としてあります。歯と同じ硬さのセラミックの場合、歯と同じように少しずつ削れるため歯とセラミックの間に隙間ができません。銀歯の様に接合部が虫歯なるということがほぼ無い素材といえます。
セラミックを歯科医院で作成する治療法
セラミックの治療は銀歯の治療と同じように
歯を削り虫歯を取り除く→型を取り歯科技工所で製作する→出来上がったセラミックを歯に装着する
という流れになります。
もう一つの治療法としてワンデートリートメントと呼ばれる1日で治療を完了させる方法があります。これは歯を削り虫歯を取り除いたのちに、口腔内スキャナーという歯の形をスキャンする機械でデータを取り、そのデータを元にミリングマシンというセラミックを削る機械でその場でセラミックのつめものやかぶせものを製作して歯に装着させるという方法です。当院の場合は90分程度で治療を行っています。
仮のつめものの状態が無いため不快感の軽減に
ワンデートリートメントでの治療は短時間で終わるため、仮のつめものの期間がありません。歯科治療に対する不満の中に「仮のつめものが取れて歯がしみる」「仮のつめものなので食べ物が食べにくい」「仮のつめものの期間中に硬いものを食べて歯が欠けてしまいつめものが合わなくなってしまった」というものがあります。1週間程度はこの期間があるためある意味仕方ないのですが、1日で治療を完了させることが出来る場合、こういったことから解消されます。
虫歯というのは原因細菌による病気です。歯を削り虫歯を取り除いたときに、削った歯の表面は理論上では原因細菌はいません。そこから少しずつ細菌感染をおこしていくことになります。ですのでワンデートリートメントで治療を行うことは細菌感染を防ぐという意味でも非常に意義があります。虫歯に困ってきた方にとってはとても良い治療だと思います。そして仮のつめものが無いということは患者さんの生活においてとても快適だという声を良く聞きます。つめたいものや熱いものがしみてしまって大変だったという声や、仮のつめものが取れてしまったので食べにくかったという声は実際によく聞きます。そういったことに困らされてきた方にはとても良い治療法では無いかと思います。また1回で治療が終わるというのは忙しい方にうってつけだと思います。
7種類のセラミックをつかっています
当院ではこのワンデートリートメントを行っているので院内に様々なセラミックを用意しています。また連携している歯科技工所でも何種類かのセラミックで製作を依頼しています。結果的に常時7種類程度のセラミックの中から症例に応じて選んで治療を行っています。セラミックが割れてしまうことはどんな名医でも起こりうることではありますが、できるだけゼロに近づけたいと思っていますので症例に合わせて使い分けています。
セラミック治療をやりなおすことはある?
セラミックに限らず歯科治療は100%というものはありません。人間の手によって行い、人間の手によって作られたものを使い、人間に対して行うためです。ですが出来る限り100%に近づけるように努力をする必要があると思います。巷によくあるセラミック治療に対するネガティブな意見はいろいろとありますが、このようなものが多いのではないでしょうか。
- 短期間で外れてしまった
- 周囲の歯と比べて色が違う
- 欠けてしまった 割れてしまった
- 治療費が高い
- 歯を多く削らなくてはならない
- 治療後しばらくして歯が痛くなった
その他たくさんの意見がありますが代表的なものはこれらかと思います。
ではこれらについて考えてみましょう。
「短期間で外れてしまった」という点についてですがこれは当院ではあまりありません。他院で治療したもので外れてしまったケースをたまに見るのですが接着材が歯とセラミックのどちらに残っているかを確認しています。歯とセラミックの接着についてはいくつかの手順があるのですが、簡単に説明しますと歯、セラミック、どちらも接着材とうまく着くように表面の処理をします。処理をした歯とセラミックで接着材を挟むイメージでしょうか。これが外れた場合に片側だけに接着材が残っている場合では表面の処理が行われていないか、不十分だったか、唾液等の水分が表面に残っていたかということが考えられます。当院では歯にゴムのシートをかけて周囲から唾液が入らないようにするラバーダムという器具かそれに準ずるような唾液が入りにくい処置をして接着しています。もし短期間で外れてしまったという経験があってセラミック治療をためらっているのでしたらそのような処置を行っているか歯科医院で御確認されると良いかと思います。
「周囲の歯と比べて色が違う」場合ですが、前歯などの目立つ部位については周囲の歯の写真を撮り、同じような色合いを再現できるようにセラミックを着色することで改善することができます。これは歯にセラミックを接着したあとではできないため、当院では仮にセラミックを入れてご確認していただき、問題無ければしっかりとした接着材で接着することにしています。もし色合いに違和感がある場合は再度作り直しています。この際に費用はかかりません。
「欠けてしまった 割れてしまった」場合ですが、これは他院で治療したセラミックを観察しますと、適切な厚みがないケースやセラミックの設計に少し問題があるケースが見受けられました。「歯を多く削らなくてはいけない」といったご意見と重なる点もあるのですが、セラミックは「適切な厚さ」「適切な形」で制作することが大切です。そうでない場合欠けたり割れたりすることリスクがあります。またそれらは先ほどご説明したセラミックの種類にも関係するお話なのですが症例に合ったセラミックを選択するということも大切です。当院ではそれらに気を付けて治療を行っていますが万が一短期間で不具合が発生した場合は作り直しや修復に費用をいただかかない、もしくは保証制度に則った費用を一部頂くことにしています。
「治療費が高い」というご意見ですが、非常に難しい問題です。一つは保険診療は治療費が一部負担するだけで良いという制度のため元々の治療費と解離があるためです。銀歯の治療であっても本来は1万数千円から数万円の治療費です。もう一つは銀歯の治療は歯科大学、歯学部で学習する範囲ですがセラミックは対象範囲ではありません。その為習得にはセミナーに参加する、本を読む、練習をする、先輩歯科医師に指導を受けるといったことが必要になります。銀歯を治療するようにセラミック治療をしていると見受けられるケースでは残念ながら長期的な予後を望めないこともあります。材料費が高い、習得するためのコストがかかる、習得したあともより良い治療のためには新しい素材、薬剤といったことや、削り型など更にセミナーに参加しなくてはならないといったこともコストになるため治療費は決して安くはありません。
「治療後歯が痛くなった」というケースですが一時的なものであればかみ合わせの状態を確認し調整することで解消されることがほとんどです。神経を抜かなくてはいけない状態の場合は元々の虫歯が深かったり神経に近い等症例として難易度が高いケースもあり、セラミックだけの問題ではありませんがセラミック治療が高額であるということを考えると予めその後治療が必要になる可能性があることについて事前にご説明を行うことが大切だと考えています。
安心してセラミック治療を受けられるために
できればせっかくセラミック治療を行った方の同じ歯の再治療は無い方が良いと考えています。その為、ご自身の歯について、口全体についてお話をさせていただきご納得いただいた上で治療を受けていただきたいと思います。また、治療の精度を上げるためにも口腔状態の改善はかかせません。歯の治療と同時に口腔状態の改善、そしてアフターフォローとしての定期的な検査とクリーニング、歯周病治療。歯科医師&歯科衛生士と患者様自身の二人三脚で取り組むことが大切です。是非一緒に歯の健康のためにがんばっていきましょう!