歯のコラム
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定期検診で虫歯と歯周病の早期発見を
2024.09.06
「どうして検診に来てるのに虫歯が出来たんですか?!」
歯科医院での歯科検診に通っていたのに虫歯になってしまったり歯周病になってしまったりすることはよくあります。「通っていたのにどうして?」と思ったとしても不思議ではありません。しかし歯も口も身体の一部、家電などの修理可能なものとは違います。身体も毎年検診や人間ドックに通ってもやはり病気になることはあります。身体の不調は病院の先生のせいでしょうか?違いますよね。自分の生活習慣や環境も原因ですし、いくら気を付けていても病気になる時はなります。身体の不調と違って歯については硬い器官だからか、どこか家電のように考えている方が多いように思います。家電であれば購入してすぐ不具合があれば交換してもらえますし、保証期間内であれば費用発生の有無もありますが修理ができます。歯を保険診療でかぶせものやブリッジを作った場合は素材にもよりますが一定期間再治療が無償になっています。あまりに短期間ですと治療計画の変更が必要であるなどのケースがあるためです。
しかし長く使っているつめものやかぶせものの中が虫歯になっているケースは多くありますし、治療した歯とは違う歯が虫歯になることも多くあります。歯周病の場合も一度落ち着いた箇所が再度炎症を起こすことや、他の箇所が炎症を起こすことも多くあります。
重要なのは定期検診と定期検診の間のセルフケアの期間
私達の歯科医院では定期検診は30-60分程度です。そして定期検診の間隔は約3か月です。1年365日の間の2時間~4時間のお時間をいただいていることになります。貴重な時間をいただいているのですからしっかりと検査や治療をおこなわなければと思っています。2時間から4時間でその他の約8756時間の健康を保つためのお話をしなければならないので責任重大です。そして約8756時間セルフケアで健康を維持するのは患者さんご本人です。圧倒的の多いセルフケアを適切に行う為のアドバイザーといった立場である歯科医師と歯科衛生士と、実行するプレイヤーである患者さんの二人三脚体制で歯と口の健康を守っていくことになります。
状態の確認の重要性
治療を家電の修理に例えましたが修理する場合も分解して内部を確認し、部品の交換などを行っています。同様に定期検診では状態の確認が重要です。私達の医院では基本的に歯周精密検査を行い歯肉の状態を確認しています。この検査結果データは過去のデータと比較しながら歯肉の状態がどう変わっているかを確認し、状態をお伝えしています。同じ数値の検査結果データであっても、前より良くなってきているのか、悪くなっているのかということは非常に重要です。歯科検診を同じ医院で行わず、色んな歯科医院で行っている方がいます。時間が取りにくい、先の予定がわかりにくいといった事情はあるかもしれません。利便性の面で考えられているということですと仕方ないのですが、同じ医院で検診を続けて行くことのメリットもありますのでどちらが良いか考えていただければと思います。また歯科医院側からすれば、検査結果のデータがある方の場合は何か症状が出た時に治療計画が作りやすいためスムーズに治療が行えるという利点があります。初めて来院される方が歯の不調を訴えている場合と、定期検診を受けている方が歯の不調を訴えている場合では当日必要な時間が変わることがあります。予測が出来る不調であれば受け入れやすいということです。予約が取りやすいということは患者さんにとってもメリットではないでしょうか。
検査を元に治療を行うということ
患者さんからお話を聞いたり、採用面接時の歯科衛生士の方から聞いたりすることのなかに「今まで検査をしたことがない」というものがあります。患者さんからだけなら「口を開けているだけなので検査に気付かなかったり、担当した人から説明がなかったんだろう」と思うのですが、行う側の歯科衛生士からも聞くということで、世の中には検査を行わず保険診療で検診を行っている医院があるということを知りました。厳密には歯周病の検査を行った上で必要があれば歯のクリーニングや歯周病の治療を行うため、検査をしないのはルール違反です。またクリーニングに妥当性がないため治療や予防の効果の精度も低くなります。家電の修理で例えるなら「どこが悪いかわからないが部品を交換してみて動いたから修理完了」といったところでしょうか。ですので検診希望の方に「1日で終わらせて欲しい」「検査はしないでクリーニングをしてほしい」と言われると上記の内容をお伝えするのですが、驚かれることがあります。
定期検診の間隔は?
歯周病の原因は細菌によるものです。完全無菌状態であれば歯周病になることはありません。しかし様々な経路から細菌感染し、ある日歯周病を発症します。歯周病の原因細菌は歯ブラシで除去することができません。原因細菌は1種類ではなく、いくつかの細菌が集まって生きています。そしてその細菌の中にはぬるぬるとした物質をつくり集まっている細菌を外部から守っています。これをバイオフィルムといいます。バイオフィルムの除去は歯科医院で専用の器具を使って行うのですが、数か月で元の状態へと戻っていきます。その為歯科医院での定期的な除去が必要になります。
また虫歯の状態確認も定期検診で行っています。レントゲン検査や視診を行って治療が必要な状態か確認をします。広い意味での虫歯の治療ですが、細かく分けると「つめもの」「かぶせもの」「ブリッジ」「神経の治療、再治療」と様々です。これらは状態の維持はできますが、勝手に治ることはありません。良い方向から悪い方向へ流れる川のようです。ですので基本的には早期発見早期治療が大切です。これは身体の病気についても同様ですのでイメージしやすいのではと思います。健康診断や人間ドックで要注意とされている個所は定期的に検査を行って状態を確認し、仮に初期のがんが見つかったら早い段階で投薬や手術を行うでしょう。銀歯のつめものに隙間が出来ていたら作り直しが必要ですし、神経の治療を行っている歯に再発が見られたらかぶせものを外して神経の再治療が必要です。症状が起きてから治療を行う場合、症状が悪化しているケースも多くあるため治療期間が長くなったり、治療費が多くかかったり、抜歯の可能性が高くなったりと良いことはあまりありません。
セルフケアを怠ってしまうと
冒頭の「なぜ定期検診を受けているのに虫歯や歯周病になってしまうのか」ということですが、セルフケアが充分に行えていないということが原因のケースはとても多いです。そしてこれは一人一人違います。肥満の人と平均的な体重の人の適切な食事内容が違うように、口腔状態の良い人と悪い人では毎日行うことが違います。特に虫歯が多い人に関しては生活習慣の見直しが必要なケースが多く、特化した検査もあります。これは当医院では自費診療で行っていますがご自身の状態が良くわかるため特におすすめしています。状態を検査で確認し、セルフケアを行い、また状態を検査する。この繰り返しが必要です。逆に「検診は気が向いた時だけ」「痛くなったら歯医者に行く」といったことで歯の健康が守れるという研究結果や論文を見たことがありません。エビデンスが無いことをするよりも、少しでも学術的に正しいことを行って実行していく方が努力に対して得られる健康の度合いが大きいのではないでしょうか。
健康な口腔状態と快適な生活のために
私達は患者さんの口の健康、身体の健康の為に日々働いています。ですのでそういったことに興味のない方には出来る限り説明をしています。わかって頂けるととてもうれしいです。しかし一部の方はご自身の口腔状態に全く興味が無く、治すつもりもありません。こういった方の治療は「波が来れば崩れてしまう砂の城を砂浜に作り続ける」ようなものです。それよりも見晴らしの良い高台に美しくて強固な城を作るほうが良いと思います。人生の中でできるだけ歯が痛い時間は短い方が良いでしょう。治療中で食べ物が噛めない時間も短い方が良いでしょうし、人と話すときに歯を見られて恥ずかしいと感じる時間も出来るだけ少ない方が良いでしょう。歯科医院だけ、患者さんだけ、努力するのではなく二人三脚体制で努力する方が良い結果に繋がると信じています。是非ご自身の健康のために定期検診を受けてください。いつでもご相談お待ちしております。