歯のコラム
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包括治療〜口の中全てを治す治療〜
2024.03.05
銀歯をセラミックにするだけでは不十分かも
東京駅の近く、京橋に医院を開業して丸5年を迎えようとしています。銀座や日本橋といった有名な歯科医院があるエリアのちょうど中心にあるということもあって、周辺の歯科医院がどんな治療をしているかという情報を患者さんから教えてもらうことがあります。ネットの広告やその他の媒体での広告を目にすることも多く、同業者として他院はどのような治療をしているんだろうかと興味深く見ています。
「口の中全ての治療をします」というタイトルの広告を見てみると、数本の銀歯の入った歯の画像から、それらの銀歯が全てセラミックに置き換わっていてきれいな見た目になった口の中の画像へ変化するといったものがあります。銀歯よりセラミックのほうが見た目が良いので一見治療が成功したように見えて、これから治療を始めようと考えている方からするととても魅力的な広告だと思います。ですがよく見てみると歯肉の色が悪かったり腫れたりしているものもあり、歯周病の治療がこの後続くのかな?と思うものもあります。
歯周病の治療というのは患者さんからするとあまり自覚症状がないこともあるため、積極的な治療を望まないかたもいます。結果的に患者さんの希望通りの白くてきれいな歯になっているのですが実は歯肉が腫れているという状態で治療が終わってしまうということになります。歯周病の原因細菌は神経伝達のシナプス(学生のころ生物で勉強したかもしれませんね)を切断する物質を産生します。そのため痛みを感じにくくなってしまうので患者さん自身では自覚症状を感じにくいわけです。
ということは歯周病の治療をしたうえで、銀歯をセラミックに変えたらいいのではと思った方もいるかもしれません。それは確かにイエスであるのですが、場合によっては不十分なこともあります。
根管治療が必要なケースとは ~歯の神経の治療~
銀歯をセラミックに変えるといった場合、いくつかの種類があります。
・銀歯のつめものをセラミックにする
・銀歯のかぶせものをセラミックにする
・銀歯のブリッジをセラミックにする
の3つです。
銀歯のつめものをセラミックにする場合ですが、銀歯を取り除いた内部を確認し、虫歯があれば除去して新たに歯の形を整えたうえでセラミックのつめものを作って装着する流れになります。銀歯の内部が虫歯だった場合はその程度によるのですが深い位置まで虫歯になってしまっていると虫歯を取り除いたときに歯の神経が露出してしまうためその後神経が炎症を起こし強い痛みがでることがあります。その場合は神経を抜く必要があります。
銀歯のかぶせものをセラミックにする場合ですが、つめものと同様に内部に虫歯があれば削って取り除かなくてはなりません。またかぶせものの場合、神経を既に抜いている歯のケースが多いので神経の治療に不具合が無いか確認することも大切です。歯の神経の治療を根管治療、再発したケースを再根管治療と言いますが、保険診療で行った場合再発のリスクが自費診療で行う場合にくらべて高くなります。つまり時限爆弾のようにいずれ症状が出て再治療もしくは抜歯になるかもしれないということです。
再治療の場合はセラミックを壊して外し、根管治療をやり直さなくてはなりません。せっかく作成したセラミックが無駄になってしまいます。歯科医院によっては保証を設けているところもありますが、治療費がまたかかることも多いため、経済的な負担のリスクがあります。ですので銀歯のかぶせものからセラミックのかぶせものに作り替える場合、神経の治療が必要なのかどうかといったところをチェックする必要があります。根管治療は複数回かかることが多いので治療の期間が長くなり回数も多くなります。
銀歯のブリッジからセラミックのブリッジに変える場合ですが、土台の歯の神経があるのか、それとも無いのかというところに気を付ける必要があります。つめものの治療とかぶせものの治療それぞれ注意することが大切です。
では歯周病の治療をしたうえで、神経の再治療が必要か確認したうえで銀歯をセラミックにしたらよいのだろうと思った方もいるかもしれません。やはり答えはイエスであるのですが、それだけでは不十分なこともあります。
虫歯と歯周病の原因は細菌
虫歯の原因が細菌によるものだというお話を聞いたことがあるのではないでしょうか?生まれた赤ちゃんは当然のことですが歯が生えていないため虫歯はありません。徐々に乳歯が生えてくるのですが、それらが虫歯になる原因は家族や友達から原因の細菌の感染を起こすためです。「ご飯やお菓子を食べて歯磨きをしないと虫歯になるよ」という脅し文句で子供にどうにかして歯を磨かせようと苦労している方も多いのではと思います。
当然のことながら人間は口から食べ物や飲み物を摂り、体内で栄養に変えて生活しています。ですので全く飲食をしないということはできません。どうやったら虫歯にならないかという工夫をしながら死ぬまで生活をしていかなくてはならないわけです。生活習慣の見直し、自身でのセルフケアの改善といったことが非常に大切です。既に虫歯がある人というのはこの生活習慣に問題があるか、セルフケアに問題があるか、それともその両方かということなのですが、身体に染み付いたこの毎日の習慣の改善というのは非常に難しいです。カロリーの摂りすぎ、塩分の摂りすぎ、アルコールの摂りすぎ、といった命に係わる生活習慣の改善でさえ難しいのに、すぐに命の危険がない歯科分野の生活習慣の改善というのは非常に難しいということが想像できるのではないでしょうか。歯周病も同様に細菌が原因です。
人間の性と言ってしまえばそれまでですが、生活習慣を変えるということが一朝一夕に行えることではないことではないため、歯科医師や歯科衛生士と一緒に長期的に取り組んでいかなくてはなりません。
この虫歯や歯周病の原因細菌のコントロールというのはまず検査を受けなければ効果的な治療計画が作れません。「歯科ドック」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?近年取り組み始めた歯科医院が増えてきている印象があります。身体の病気と同じように早期発見、早期治療が歯科においても大切です。
では歯科ドックを受けたうえで歯周病の治療をして、根管治療が必要な歯があれば治療をやりなおし、そして銀歯をセラミックに作り替えたら良いのではないかと思った方がいるかもしれません。はたまた、またひっかけ問題のように次にもまた注意しなくてはいけないポイントがあるのでは?と思った方がいるかもしれません。確かにこの状態で治療を終えても良い方もいます。歯科ドックを行った結果でわかるのですが、もう1点気を付けることが必要なことがあります。「かみ合わせに問題がないか?」ということです。
かみ合わせの重要性
かみ合わせといえば「矯正」と考える方がいるかもしれません。確かに矯正は乱れている歯の並びをきれいに整えるという治療です。審美的な理由で行う方もいますし、機能面での向上を考えて行う方もいます。どちらも満たしている治療が良いのですが、どちらかのみ、もしくはどちらも満たしていないことも残念ながらあります。
人間のあごの力は非常に強いため歯全体に力がかかっているのは良いのですが、一部に強い力がかかっていると様々な症状を引きおこします。歯が欠けたり、歯が折れたり、歯が割れたり、あごの骨が隆起してきたり、歯肉が下がってしまったり、歯が揺れてしまったり、あごに負担がかかったり、その他いろいろな症状があります。それらを改善するためにかみ合わせの治療を行うことも大切です。
これも歯科ドックで現在のかみ合わせのデータを取り、それらを元にして正しいかみ合わせの理想形を導き出し、その理想に対して現在の歯のかみ合わせを近づけていく治療になるのですが、問題がある場合は治療は長期的になります。
包括治療で行うこと
口の中全体を治療しようと思うと、実は非常に治療回数が多く、治療期間も長くなりがちです。その結果として長期的に使うことができる歯、虫歯や歯周病の再発リスクが少ない状態を手に入れることができるのです。まずは歯科ドックを受けて自分の現段階での状態を確認しましょう。そしてその結果を基に一つずつしっかりと治療を行っていきましょう。検査がなければどんな治療が必要なのか正しくわかりません。再発のリスクの少ない治療、銀歯が口の中に1つもない状態、といったことに興味があればお気軽にお問い合わせください。