歯のコラム
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どうしても避けられない抜歯とは
2023.12.15
残せる歯と残せない歯の違い
歯を抜きたくないというのは患者様も歯科医師も同じです。元々生えていた歯をそのまま使いたいというご希望と、そのまま使うことが出来るという診断が合致すれば歯を残すことができます。
しかし歯を残すことが出来ないケースも当然のことながらありますので、歯科医師と患者様との間でご相談が必要です。
ではどのような状態の歯は残すことができないのでしょうか。
患者様の「歯を残したい」というご希望にも色々な種類があります。
- 1 歯の状態がやや悪い 自費診療を含んだ良い治療を行いたい
- 2 歯の状態がやや悪い 費用をかけずに治療したい
- 3 歯の状態が悪い 自費診療を含んだ良い治療を行いたい
- 4 歯の状態が悪い 費用をかけずに治療したい
- 5 歯の状態が非常に悪い 自費診療を含んだ良い治療を行いたい
- 6 歯の状態が非常に悪い 費用をかけずに治療したい
上記の6つに分けた場合、5と6についてはやはり抜歯しかありません。
学術的に抜歯となっている状態を残すことは出来ず患者様の希望よりも診断が優先されます。5の場合は抜歯後にインプラントなどの治療が検討されるのですが、6の場合は治療の合意ができずそのまま放置になるか転院して希望通りの治療を行ってくれる歯科医院を探すことになります。当然のことながら応急処置的な治療しかできないためいずれ自然に歯が抜け落ちてしまったり、痛みなどの症状が出てくることがあります。
1の場合はマイクロスコープ根管治療やセラミック治療など長期的に歯を残すことができる治療法が候補としてあげられます。一方2の治療は通常の根管治療や銀歯の治療となり短期~中期的に歯を残すことができますがいずれ抜歯を踏まえた治療となります。
これらの場合はある程度歯科医師の診断も患者さんの納得もしやすいのですが、判断に迷いやすい3と4のケースはその後の状態に非常に影響がでやすいケースです。
3と4の場合は歯を残すことが出来ない可能性が高いため、抜歯を踏まえた治療となりますが、4のケースでは本当に望んでいる治療はどのような治療なのか歯科医師も患者様も考える必要があります。
例えば「できるだけ自分の歯を残したいが費用はあまりかけたくない」という場合、治療を行ったとしても早ければ数か月で状態が悪くなり抜歯になってしまうことがあります。根本的な治療ではなく延命治療と言えるでしょう。この時「治療して数カ月しか経っていないのに抜歯なんて治療ミスじゃないか」といったトラブルになる可能性があります。
実際には抜歯の可能性が低くないことを事前に伝えていたとしても目前に迫った抜歯という現実から感情的になってしまうというのはわからなくはありません。しかし歯科医師の言い分として「それでも良いと同意を得たので治療をした」ため、更なる延命治療ができません。トラブルを避ける為に治療をしない方が結局歯科医師にとっても患者様にとっても良いのですが、こういった延命治療は往々にしてあります。当院では状態の悪い歯を残しておくことは周囲の歯に悪影響を及ぼす可能性があるということや、全身の健康にも関連があると考えているため、抜歯を提案しています。
3ですが、自費診療と保険診療の違いは見た目が良いという審美的な問題だけではありません。治療に使える器具や機材、薬剤が違うという大きな違いがあります。その為歯を残す可能性を上げることができるため、自分の歯にこだわるのであれば非常に良い治療法と言えるでしょう。
保険診療は費用が安く治療できるという非常に良い制度です。長期的な目で見たとき、「75歳の平均残存歯数が15本」という抜歯も多い治療ということにも注意しなくてはなりません。
自費診療は抜歯のリスクを下げ、長期的に治療をするためにはどうしたら良いのかという点について結果を出すために歯科医師は努力や勉強をしていますし、器具や薬剤のメーカーも開発しています。そのため保険診療に比べて歯を残せる可能性があります。
歯にかけるコスト(治療費と日々のケア)
歯にかけるコストを考えた時にまっさきに頭に浮かぶのは治療費だと思います。実は日々のケアという人的コストについても考える必要があります。治療費をあまりかけられない場合にかけられるコストはご自身での日々のケアや生活習慣の見直しです。これを行わずに歯を残すことはできません。毎日の歯みがきの方法や時間、使う器具、フッ素入りの歯みがき粉やうがい薬、キシリトールのタブレットやガム、間食の内容やタイミング、そういった様々なことについて全く気を付けない人と、歯科医院で指導を受けて忠実に毎日行える人では当然のことながら口腔内の状態は変わります。どちらもかけないのであればそもそも歯科医院に来ることすら意味がないかもしれません。
抜歯すべき歯の具体例
歯の根が折れている、ヒビが入っている
神経を抜いた歯におこりやすい症状です。力がかかることにより歯に亀裂が入ります。亀裂から細菌が侵入し炎症を起こすことにより周辺の骨が溶けてなくなってしまい、歯が揺れて維持できなくなります。炎症によって膿がたまり痛みが出たり歯茎から膿が出たりします。自費治療を行っている歯科医院の中にはこのような歯を一度抜いて接着材で修復して植えなおす治療を行っていることがあります。予後どれくらい使うことができるのか、治療費についてはケースによって違います。
歯の根しか残っていない歯
虫歯の治療を放置した結果、折れたり欠けたりして最終的に黒くなった歯の根だけが歯肉に残っていることがあります。残根といいます。食べるために使うことができないため口の中にあっても意味がありません。1のように炎症が起きる可能性があります。また細菌が増殖しているため口腔状態が悪くなり他の歯にとって良くありません。
炎症を繰り返したり生え方が正しくないおやしらず
おやしらずの周囲の歯肉が腫れると強い痛みがでます。清掃しにくいという原因の為何度でも繰り返します。抜歯以外解決方法はありません。また斜めに生えているおやしらずは隣の奥歯との間に汚れが溜まりやすいため隣の奥歯に虫歯が出来てしまうことがあります。これは歯肉の下に埋まっている状態でも起こるため、気付かないうちに奥歯の根に近い部分が虫歯になってしまうと抜歯するしかなくなってしまいます。
重度歯周病の歯
歯周病の症状の中で重要なもの簡単に言えば歯の根を支えている骨が溶けることです。歯周病は痛みが無かったり少ない状態で進行する病気ですので気付いた時には歯が揺れてしまいます。痛みが無いため抜歯しようという決心がつかないことが多いのですが、残しておいても歯周病のその他の症状、歯茎の腫れ、出血、口臭が治まることはありません。また歯周病の原因細菌は全身疾患に関連があることが多く知られていますので、口だけでなく全身の健康にも悪影響が出てしまいます。健康的な食事を摂りたいという方は多く、その目的は健康の維持なのにもかかわらず、口の中でわざわざ原因細菌を増殖させ体内に取り込むというのは本末転倒でしょう。
抜歯は痛くない?
昔は抜歯は痛いものというイメージがありました。現在はできるだけ痛くない治療を掲げている歯科医院が多いです。麻酔に工夫をすることで痛みを軽減して抜歯を行います。
- 1 歯肉の表面に塗り薬の麻酔を塗る。(麻酔針を刺すときに痛くないようにするためです。)
- 2 人肌程度に温めておいた麻酔薬を注入する(冷蔵保管されている冷たい麻酔薬は痛みを感じやすいです)
- 3 電動の麻酔注入機を使ってゆっくりと麻酔薬を注入する(歯肉の組織に麻酔薬を入れるため強い力で急激に注入すると麻酔自体が痛みを感じるため)
- 4 下のあごのおやしらず等麻酔の効きにくい箇所はあごの神経に麻酔薬を入れて痛みを遮断する。
- 5 長時間の治療になった場合や痛みを感じた場合は麻酔を追加して治療を行う。
など様々な工夫をしながら抜歯を行っています。
残念ながら抜歯をしないでおいてもいずれ痛みが出て抜歯になってしまったり、勝手に歯が抜けてしまったりします。治療は早期発見早期治療が基本ですので何か気になることがあればお早めに診察をうけることをおすすめいたします。