歯のコラム
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予防歯科と唾液のお話
2023.09.06
CAMBRAから見た唾液の重要性
当院ではアメリカの予防歯科のプログラム=CAMBRA_キャンブラを取り入れています。このCAMBRAの特徴として唾液の検査やレントゲン検査を行うことで虫歯になりやすさを4つのリスクに分類するということがあります。
- 1.エクストリームリスク 非常に高いリスク
- 2.ハイリスク 高いリスク
- 3.ミドルリスク 高いとは言い切れないが決して低いリスクでは無い
- 4.ローリスク 低いリスク
これら4つのリスクを決める要素のうちに唾液の量や唾液に含まれる細菌の種類と活動量というものがあります。
唾液の量が少ないと虫歯になりやすい?
唾液の量の検査は文字通り決められた時間においてどれくらい唾液が出たのか調べる検査です。分泌された唾液をメスシリンダーに吐いて計測します。虫歯の予防を考える上でこの唾液量が非常に大切な要素となります。検査結果リスクが高いと診断された者の中で極端に唾液が少ない場合、エクストリームリスクに分類されます。
なぜ唾液が少ないとリスクが高いのか
唾液の働きは沢山あります。皆さんが思いつきやすいものですと、食べ物を飲み込みやすくするというものがあるのではないでしょうか?カステラなどを食べると唾液が生地に吸収されてしまって口の中がパサパサになり飲み込みにくくなってしまうという経験は誰にでもあるのではと思います。ちなみに私は子供の頃、牛乳とカステラを一緒に食べるのがとても好物でした。話がそれてしまいましたが、唾液によって噛み砕かれた食物が流動状になり飲み込みやすくなるということは唾液の役割の一つです。
唾液には高プロリンタンパク質、糖タンパク、ムチン、カルシウム、リン酸塩、重炭酸塩、抗菌性抗ウイルス性抗真菌性物質など様々な物質が含まれています。体を守る作用や消化を助ける作用といった身体全体に関わる機能はとても大切な作用です。では歯科に関わる分野においてはどうでしょうか。
虫歯は細菌によって引き起こされる病気
子供の頃に槍やツルハシを持った悪魔のような虫歯菌が歯に穴を開ける絵本を読んだ記憶があるのではないでしょうか?虫歯は細菌によって引き起こされるのですが、そのメカニズムについて考えたことが無い方も多いかもしれません。いわゆる糖を取り込み酸を生成するのが虫歯の原因細菌の働きです。砂糖のイメージがあるかもしれませんが、お菓子やドリンクに含まれる甘味のほかにご飯やパン、麺類なども糖です。日々生活している中で食べる3食の食事とおやつ、デザート、フルーツこういったものには糖が含まれていますので、虫歯の原因細菌はその度に酸を生成します。その際に歯の表面のミネラル分を奪うのですが、この作用を脱灰と言います。そしてその後唾液によって脱灰した歯の表面にミネラル分が補われていきます。これは数時間かかります。この作用を再石灰化と言います。再石灰化については歯磨き粉のテレビCMでも良く聞く単語かもしれません。脱灰と再石灰化は1日の中で何度も繰り返されています。食事を摂るたびに、おやつを食べるたびに、甘い飲み物を飲むたびに、繰り返されています。
細菌が酸を作るということは、口の中のpHは下がっていきます。歯の表面のエナメル質、その内部の象牙質にはそれぞれ耐えられる酸のpHがあります。それらを下回ってしまう状態が長く続いてしまうと歯に穴が開いていきます。これがいわゆる虫歯です。
甘いものを食べるなら短時間で
酸によって酸性になった口の中の環境は唾液の作用によって次第に中性に戻っていきます。これを緩衝能と言います。酸性から中性に戻るには数時間かかります。この中性に戻っていく途中でまた別の食べ物や飲み物を摂ったらどうなるでしょうか?そうです。また酸性に傾いていきます。歯が酸性に晒されている時間が長くなってしまうということです。ですので食事や間食を摂るなら短期間が良いでしょう。1日に食べ物や糖を含んだ飲み物を摂る回数は少ない方が良いでしょう。
口の中が酸性になってしまった環境の中では酸を作った虫歯の原因細菌は元気に活動しているので増加していきますが、逆に善玉菌にとっては住みにくい環境ですから減少していきます。どんどんと口腔内の状態は虫歯ができやすい環境へ変わってしまいます。
唾液が少ない人はどれくらいいるの?
唾液は歯を守るためには必要不可欠の存在だということはわかってもらえたのではと思います。ですが自分が唾液が少ないと自覚している人もまた少ないことがわかっています。自分が唾液が少ないと考える方は数%しかいませんが、人口の20から40%いるという調査結果もあります。
唾液が少なくなってしまう原因はさまざまです。
- ・遺伝
- ・疾患
- ・薬剤の副作用
- ・年齢
- ・ストレス
- ・栄養のない食事
などが原因と考えられています。
この中で薬剤の副作用という点について掘り下げてみましょう。1日に1種類の薬剤を服用している人は20~30%の割合で唾液が少ない状態でした。1日に6種類の薬剤を服用している人の場合は60%以上が唾液が少ない状態でした。結果的に薬剤を摂取するほど虫歯のリスクも高いということです。しかし理由もなく6種類の薬剤を飲んでいるわけはありませんから医科の側の主治医とご相談が必要になることもあります。薬剤を減らすことができない場合はその状態のままどれだけ口腔内の状態を良くするかということに取り組まなくてはなりません。
予防歯科に取り組むタイミングは?
唾液が少ないという検査結果が出た人はもちろんのこと、検査はしてないが予防に興味がある方も早めに予防歯科に取り組む必要があります。虫歯というものがある意味生活習慣病という側面もあるため、日々の生活の改善も行わなくてはなりません。予防歯科は口腔内の環境改善ですので行うタイミングは今すぐです。後に送る理由はありません。思い立ったら吉日。虫歯が既にあるとしても予防歯科をスタートしてからの方が治療の成功につながります。
唾液に代わるものはあるの?
唾液が出にくいという体質=口の中のpHが酸性になりやすい ということですので口の中のpHを中和させる薬剤でうがいをするということが必要になります。pH中和剤というタイプのうがい薬です。当院では在庫していますので気になる方はスタッフまでお声がけください。しかしながらまずは予防歯科の検査を受けてご自身のリスクがどの段階に分類されるかといったことはしっかり確認することをおすすめします。
虫歯を治療する時代から予防する時代へ
虫歯治療は以下の流れが一般的です。
- 1.虫歯になったら削ってつめものをする。
- 2.再発して痛みが出たら神経を抜いてかぶせものをする。
- 3.さらに再発して治せなければ抜歯をする。
- 4.インプラントやブリッジや入れ歯にする
というのが治療の流れです。まだまだ主流の考え方です。しかし予防すれば歯を削らなくてもいいわけです。痛みに耐える必要もありませんし、いつ歯が痛くなるんだろうと心配する必要もありません。老後元気な身体を保つためには歯の本数が多いと良いと言われています。有名な考え方ですと8020運動でしょう。80歳になるまでに20本の歯を残したいという考え方です。しかしながら現在の75歳の平均の残存歯数は15本です。8020を達成するということは容易なことではありません。予防歯科に取り組まずに達成するというのはさらに難易度も上がるでしょう。
歯を治療し、細菌にもアプローチする歯科
今まで治療を行っている中で治療と再発のイタチごっこのような方を何人も治療してきました。せっかく治したのにどうして再発してしまうんだろうかと疑問もありました。その中で歯だけでなく口の中の細菌も治療しなくてはならないのではないかと思うようになり予防歯科に力を入れています。
予防歯科は歯を削りたくない、歯を抜きたくない、といった方にはとても合う治療だと思います。ご予約はお電話でもネットでも構いませんのでお気軽にご連絡ください。