歯のコラム
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銀歯が取れてしまうのは
2023.07.05
こんにちは。保険診療のメリットの1つに費用が抑えられすぐに治療が終わるということがあげられます。数年前から新しい素材も導入されましたが保険診療の中心は銀歯の治療です。銀歯の治療とその他の治療についてお話したいと思います。
銀歯のメリットとは
金属の素材での治療のメリットとして欠けないということがあげられます。金銀パラジウム合金、銀合金、チタンなど保険診療で使われる金属、ゴールド、プラチナといった自由診療で使われる金属どちらも基本的に金属の特性として欠けないため、つめものやかぶせものに使われてきました。保険診療で使われる素材は比較的安価ということもメリットの一つでしょう。
銀歯のデメリットとは
金属アレルギーを持っている人は基本的に銀歯は入れられません。またアレルギーは今まで大丈夫でも症状が出てくることがあるため金属アレルギーの症状が出た場合は取り外す必要があります。海外ではパラジウムの使用が禁止されている国もあります。
歯を残すためには
我々の治療の目標のうちの1つに「天寿を全うするための治療」というものがあります。天寿という言葉を辞書で調べてみると「病気や外傷によらず自然死する」というという意味があります。詳細はまた別のコラムでご説明しますが、健康を保つためには口腔機能が高く保たれていることが必要です。第一に歯の本数が多く必要なのですが、それには虫歯の再発を防がなければなりません。
なぜ銀歯は外れるか
銀歯のつめものやかぶせものを装着する際には歯科用の接着材を使用しますが詳しく言うと「合着」という方法になります。セラミックのつめものやかぶせものは「接着」と言います。
合着という方法を詳しく説明しますと歯を削り、削った形に合わせて銀歯を作ります。この時力が掛かった際に引っかかるように削りはめ合わせます。接着材はその間に入り、はめ込んだ歯と銀歯の間で簡単に言うとつっかえ棒のような役割を果たします。
一方接着という方法は歯とセラミックを化学的につなぎ合わせます。その為非常に強い力でくっついています。
銀歯の硬さと歯の硬さ
銀歯の金属と歯の硬さには差があり銀歯の方が硬いのですが、そのため銀歯のつめものを長期的に使っていると隙間が生まれてきます。これは歯と金属の磨耗のスピードが違う為です。歯が削れる???と思った方も多いかもしれません。歯は使っているうちに自然に摩耗していきます。
歯と銀歯の隙間から唾液が侵入すると中の接着材を溶かしてしまい銀歯のつめものが外れてしまいます。また唾液に含まれる細菌が酸を作り虫歯が進んでいきます。銀歯の下は象牙質という虫歯が進みやすい性質があるもので出来ていますので銀歯が外れたら中が虫歯だったという体験をしたことが多いのではないでしょうか。外れた内部の虫歯を削ってまた銀歯を作成してつけることが出来れば良いですが、当然のことながら歯を削るため神経近くまで虫歯になっている場合は神経を抜く治療が必要になります。
「削ったら痛みがでた」という大量のご相談
ネットのお悩み相談でよくあるものの中の一つに「痛みが無い虫歯を削られて、その後痛みが出た。」というものがあります。これはとても多いものです。本当に多くて過去の質問を見直してもらえたら良いのにと思うくらい頻繁にあります。色々な先生が回答していますが基本的には「深い虫歯だったから仕方ない」ということに集約されると思います。痛みが出た虫歯については患者さんもわかっていますので神経を抜くということに抵抗はあまりないように思います。痛みを取ることが1番の目的になるからです。まれに痛みを我慢して落ち着くのを待つ方もいますが、自然に神経が死んでしまいますのであまり意味がありません。というよりも神経をしっかりと抜かないでいることは抜歯のリスクを高めますので本末転倒です。
痛みは出ていないが虫歯を削ったら痛みが出るかもしれないということはよくあります。この場合は神経の温存を試みて結果痛みが出なければよし、痛みが出たら神経を抜くという方針になるのですが、これは神経が残っている歯は予後が良いという理由から行われるものです。治療方針についてしっかりと説明があればトラブルになりにくいのですが、説明がない場合はトラブルになることもあります。
患者さん「痛くない歯を削られた。痛みが出た。治療ミスじゃないか」
歯科医師「元々虫歯が深かったのでミスではない。削らなければいずれ痛みが出る」
ということになるのですが事前に説明があればトラブルを避けられるかもしれません。患者さんご自身から神経を抜かなくてはいけないのか質問される方もいます。ご心配な方はその方が安心かもしれません。初めから神経を抜いて欲しいというご希望をおっしゃる方もいます。どうせ状態が良くないなら早めにかぶせものの治療をしてしまいたいということなのですが、もし神経を残せる状態ですともったいない気もします。
ただ、深い虫歯を作ってしまったのは患者さん自身ですので「絶対に神経を抜かないで欲しい」「痛みが出たから治療ミスだ」というのは少し違うように思います。神経を抜くか抜かないかというのは学術的に正しいかどうかに基づいて行われるものであって、患者さんの希望だけで行うものではないと思っています。希望を踏まえた上で学術的に正しいかがとても大切です。これは患者さんの意見と学術的な診断が合わない場合、結果的に患者さんの希望通りの結果にはならないためです。そういった強い主張をされる方が多くなってしまうと、歯科医院も治療を断ることが多くなってしまうと思います。
銀歯はどれくらい使えるか
治療する歯科医師の技術も違いますし、患者さんの口の中の状態も違います。極端な話ですが歯をあまり磨かない人と綺麗に磨く人、予防歯科の検査を受けセルるケアを行っている人では治療の予後が違います。一概に銀歯が長持ちするとか長持ちしないとか言えるものではありません。ただ研究結果のデータで興味深いものがありますのでご紹介いたします。
歯科修復物の使用年数に関する疫学的調査(口腔衛生学会雑誌46より)
金属の詰め物 平均使用年数 5.4年
金属の被せ物 平均使用年数 7.1年
となっています。
銀歯のつめものを初めて入れてから12.5年で抜歯になっているということになるのですが、これを長いと考えるか短いと考えるかは人それぞれでしょう。
抜歯を避けるために行えること
銀歯が取れるという話は歯科医院では日常的に起こっています。皆さんもご自身やご家族、友人、お知り合いなど沢山の方の銀歯が外れたケースをご存じではないでしょうか?
また特に驚くようなことでもないのではないかと思います。銀歯が取れるということを受け入れているように思うのです。銀歯のつめものが取れてもいい。取れたらまた付ければいい。付けられなかったら作り直して付ければいい。それでだめなら神経を抜いて銀歯のかぶせものをつければいい。かぶせものが取れたらまた付ければいい。付けられなければ治療をやりなおして銀歯のかぶせものを作り直せばいい。それでだめなら抜歯です。そこで慌てる方は多いかもしれませんが。
では銀歯の治療をどこかでやめて他の素材に変えてはどうでしょうか?セラミックの治療は海外で多く研究されてきました。総じて長期的に使うことが出来る安全な素材だという結果が出ています。つめものをセラミックにすることで神経を抜かなくてはいけないほど虫歯が進行することを防ぐことが出来る確率を上げることができますし、かぶせものをセラミックにすることで抜歯のリスクを下げることができます。自分の歯の健康を保つためにも一度検討してはいかがでしょうか。ご相談はいつでも受け付けております。お気軽にご連絡下さい。