歯のコラム
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全顎的治療~治療済みの歯がたくさんある場合~
2023.05.26
CAMBRAから見た虫歯になる確率
虫歯の治療は1本だけでしたらあまり時間もかからず難易度もあまり高くないことが多いです。難しい症例はどんなものがあるかといえば、複数の歯に異常があり咬み合わせにも問題が出ているようのものがあります。
CAMBRAというアメリカの予防歯科のシステムでは虫歯になりやすい状態を4つのリスクで分類します。
- 1.ローリスク
- 2.ミドルリスク
- 3.ハイリスク
- 4.エクストリームリスク
の4つです。
それぞれ1年間に新しい虫歯が出来る確率は
ローリスク 23.6%
ミドルリスク 38.6%
ハイリスク 69.3%
エクストリームリスク 88.0%
です。
ハイリスクとエクストリームリスクの患者さんは全体の約70%ほどです。
といった研究結果からおおまかにお話すると数年間に虫歯の治療をしたかたや既に複数の治療済みの歯がある方は少なくとも3年に2か所くらいの虫歯になるということです。
歯に異常を感じて治療を行い、歯周病の検査や治療も行い、その後定期検診を受けていても虫歯や歯周病の完全な予防は出来ませんのでまた虫歯が出来てしまいます。
一般的な虫歯治療の流れは
- 1 初めは小さい虫歯ですから保険診療のレジン修復を行う
- 2 レジンの周囲が虫歯になり銀歯のつめもので治療する
- 3 銀歯のつめものの下が虫歯になる 症状が無い場合もある しみたり痛みが出る
神経を抜く治療を行い銀歯のかぶせものつける
こういった治療を数年かけて行っていると元の咬み合わせと違ってしまうことが多くあります。
修復する際に歯の型を取って銀歯を作るのですが元の歯と全く同じ形にすることができないのでズレが生じてくるわけです。
「銀歯のつめものを入れたけど、なんか噛むと高い気がするな」「噛みにくいから逆の歯で噛もう」
といった経験はありませんか?
同じ医院でも勤務医の先生が変わってしまったり、引っ越しのタイミングで新しい歯科医院に変わったりといったこともあるかもしれません。どんどん治療する度に元の歯並び、かみ合わせと変わってきます。神経を抜いた歯の銀歯のかぶせものは素材の性質上長期間使えるものではありませんので抜歯になってしまう歯もあるでしょう。入れ歯、もしくはブリッジ治療で足りない歯を補わなければいけません。そうして数年間で出来た咬み合わせはまだ治療を受けたことの無い状態と比べると大きく変化してしまっています。
全顎的治療とは
複数の歯を長い年月をかけて治療を繰り返すと咬み合わせに異常が出ることがあるのですが、やはり虫歯が出来やすい口腔状態ですので治療のために来院されます。問診、レントゲン検査、視診などを行い「これは難症例だな」と思うのですが、自覚症状が無い患者様にはなかなかご自身に起きている事態を理解してもらうのが難しいです。症状のある1本だけ治療して欲しいというご希望がある場合、その1本を治すことすら難しいということもあります。
その1本の治療を行ったとしても長期的に状態を維持することができないため、再治療が必要になります。短期間に再治療になれば「前回の治療にミスがあったのではないか」と患者様が考えても不思議ではありません。実際にはそうではないということを理解してもらうことが非常に難しいということもあり、積極的な治療をしないという歯科医師もいます。
では全顎的に治療をしなくてはいけないということについて理解を得られた場合はどのような治療になるでしょうか?
1 全ての歯の型を取り、かみ合わせの診査を行う
咬み合わせに問題がある場合、理想的なかみ合わせを精査することが必要です
2 全ての歯の詳細なレントゲン撮影を行う
虫歯の有無、既に神経を抜いている歯の根の状態確認、あごの骨の状態を確認します
3 唾液検査を行う
唾液の量や含まれている細菌の種類や活動量を調べます
4 生活習慣の確認
虫歯や歯周病は生活習慣と密接に関連しているため現状の生活習慣を確認します
5 それらの情報を元に一番良い治療の計画を作成します
6 治療計画をご説明し、合意が得られた場合治療が開始されます
全顎的治療を行う際に気を付けること
全顎的治療をする場合、長期間になることが多いです。その為口腔内の状態を改善する必要があります。検査をすることでどれぐらい虫歯になりやすいかのリスク判定ができますので治療と並行して予防歯科を行うことになります。長期的な治療を行っている間に他の箇所が虫歯になってしまうということを防ぐという意味もありますが、口腔内の状態が良い方が行っている治療の成功率が上がるためです。
また歯周病の場合も同様で歯周病の状態を良くしてからかぶせものの治療をした方が正確なかぶせものを製作できますので先行して治療を行います。
咬み合わせに問題が生じているようなケースではつめものやかぶせもの、ブリッジなどが多く入っていることがありますが、これらが問題の原因となっていることが多いため、原則全て外して仮歯や長期間使用することが出来る種類のセメント等で一旦置き換えます。セラミック、ゴールド、ジルコニア、インプラントの上部構造(白い歯の部分)などの自費診療のつめものやかぶせものでもそれらを残すことで状態の改善ができない場合は外さなくてはいけないので、ここが大きなポイントとなります。
神経の無い歯の場合
神経を抜いた歯や神経を抜かなくてはいけない歯がある場合、長期的に使用することを考えると神経の治療=根管治療をしっかりと行う必要があります。神経を抜く歯、抜いた歯が長持ちする条件は
1 根管治療を精密に行う
2 かぶせものを性能の良いセラミックやゴールドにする
3 歯周病の場合は歯茎の状態を改善させる
ということがあります。
計画的な治療
全顎的な治療は長期的に行うものです。治療計画を立て歯科医師と患者様の間で合意が得られたら治療がスタートします。これは計画的に行う必要があります。途中で中断することで治療の成功率が下がってしまう治療もあります。どうしても治療が受けられない期間がある場合、それも踏まえた計画を作るのがよいでしょう。治療計画を変更しなくてはならない場合は事前のご相談が必要です。また治療途中での中断もリスクの高い行為です。これらも含めてしっかりと考えた上で治療を開始することをおすすめいたします。
咬み合わせに問題がある場合
歯並びに乱れがある場合は矯正治療を行うという選択肢も出てきます。この場合は矯正治療前に問題のある箇所を仮歯にすることもあります。矯正治療もまた長期的な治療となりますが、器具を歯に装着するという性質上、口腔内の清掃性を保つことが難しいため、予防歯科の検査に基づいた毎日の予防プログラムをご自身で行うことが大切となってきます。矯正中に虫歯がある場合はマウスピースが合わなくなったり、ワイヤーを外さなくてはいけなかったりと非常に手間や時間がかかりますし、治療費がかかることもあります。以上の理由から矯正治療前には口腔内の状態は必ず確認する必要があります。
全顎的な治療に迷ったら
患者様は自覚症状があって歯科医院に来院されることがほとんどですので、原因を取り除かなければ症状は消えません。全顎的な治療の場合はその範囲も広く治療を躊躇することや、悩まれることもあるでしょう。
治療する時間や期間の問題と治療費の問題が大きい治療ですのでまずはご相談をお願いいたします。
長年歯の異常に悩まされている方、虫歯の治療が多い方、既に歯が無い箇所がある方、などこれからしっかりとご自身の歯で楽しく食事が出来て死ぬまで不自由しないようにできるよう一緒に頑張りたいと考えております。
検査の結果、治療をしなくてはならない歯が多いということになれば治療費も比例して多くかかります。当院はデンタルローンでの支払いもできますのでご希望の方はお問い合わせください。