歯のコラム
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一番奥の歯の治療
2023.04.13
歯を前から数える場合おやしらずを入れると8本あります。これが上下左右ありますので計32本の歯があります。
日本人は骨格的におやしらずがまっすぐ生えてこなかったり、歯茎の中に埋まっていたりするので実際に使えている歯は7本×上下左右の28本となります。
この前から7番目の歯に異常が起きた場合どのような治療があるかというご質問は非常に多いです。医院でのご相談の他に無料の歯科相談のサイトに寄せられるご質問も7番目の歯に関することが多いです。よくあるケースについてご説明したいと思います。
なぜ異常が起きてしまうのか
一番奥の歯は歯ブラシが入りにくいということもあり清潔に保つことが難しいです。結果的に虫歯や歯周病になりやすいと言えます。またおやしらずの生え方に問題があるとおやしらずと7番目の歯の間がとても汚れやすいため異常がおきやすくなります。
また、一番奥の歯ということもあり治療の器具が入りにくいため治療の難易度が高くなります。器具を当てようとしても角度の問題で入れることが出来ないということも良くあります。あごが小さかったり、あごが開きにくいといった個人の特徴がある場合更に治療の難易度はあがります。また物を噛むという点でもとても重要な歯で常に強い力が掛かっています。その為欠けたり割れたりしてしまうことも多いという特徴もあります。
一番奥の歯は治療が難しい
歯科の治療は細菌との戦いと言っても過言ではありません。口の中に細菌がいるため虫
歯になりますし、歯周病にもなります。治療や再治療の際にも細菌がとても悪さをしてきま
す。一番奥の歯は治療の際にも細菌の含まれている唾液を排除することが困難です。
結果として再発をしてしまいます。これはレジン治療もつめものの治療も神経の治療も かぶせものの治療も全てに言えることです。特に神経を抜く治療や、神経を抜いた歯の再治療はその後抜歯の可能性が高いため精密な治療を行う必要があります。
一番奥の歯を抜歯することになったら
基本的に保険治療で行える欠損補綴(歯を失ったあとの治療)は「入れ歯」「ブリッジ」となります。自由診療ですと「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」です。
ですが、一番奥の歯はブリッジができません。ブリッジに関する相談サイトに寄せられる質問で延長ブリッジというものがあります。あまり聞きなれない言葉かと思います。
ブリッジはその名の通り抜歯した前後の歯を土台にして3本連結の橋の様に歯を作る治療です。延長ブリッジというのは歯を連結するのは同じですが土台が手前の歯だけになります。橋というよりは地面から伸びた板といった形でしょうか。高飛び込みの踏切の板のような状態をイメージしていただくとわかりやすいのですが、片側に土台が無い状態で力をかけると土台に力がかかります。これは抜歯する時と同じような力のかかりかたになりますので、手前の歯の状態が悪化し、最悪抜歯にいたることがあります。そういった理由から当院では行っていない治療です。
入れ歯の欠点として毎日のケアを行わなくてはいけないというものがあります。また、力がかかると外れることもあります。変形すると留め具が口の中を傷つけることもあります。そういった点で入れ歯を選択しない中で延長ブリッジを希望されるということかと推察します。
ただ、1本の歯を失ったために他の歯に悪影響を与える可能性のある治療を選択するということは、いずれ連鎖的に多くの歯を失いかねないことですのでできればやめたほうがよいと思います。
入れ歯も実は通常は前後の歯に金具で固定するものです。一番奥の歯は手前の歯だけに金具をかけるため大きな金具になりやすいです。慣れるまで違和感がありますし、どうしても慣れないという方もいらっしゃいます。また、入れ歯に力がかかる際に金具で固定している歯にも力がかかるため、悪影響が出ることがあります。
そうなると抜歯前の様にあまり違和感を覚えずに物を噛むことのできる治療はインプラントになります。インプラントの治療は歴史が長く、非常に多くのエビデンスがある治療法です。日々の自分自身で行うメンテナンスや定期的に歯科医院で検診をうけることで長期間使うことができるという点がとても優れています。
といった理由から奥歯は抜歯しないで済むようにした方が良いのですがその為には
- 1 健康な歯の場合、虫歯や歯周病にしない
- 2 虫歯になってしまったら早期治療をする
- 3 治療した歯がまた虫歯になってしまったらつめものはセラミックやゴールド等の性能の良い治療をする
もし既に治療済みの銀歯の歯があれば症状が起こる前に外してセラミックやゴールドにやりかえる - 4 神経を抜かなくてはいけなくなってしまったら、マイクロスコープ根管治療で精密な治療を行う
- 5 かぶせものにはセラミックやゴールド等の性能の良い治療を行う
- 6 日々自身で行うメンテナンスのプログラムを作るために虫歯予防の検査(細菌検査等)を行う
- 7 おやしらずに異常がある場合、一番奥の歯(前から7番目の歯)に悪影響を及ぼす可能性があるので抜歯する
となります。
治療には時間も費用もかかるため、積極的に治療を望まない方もいらっしゃいます。想像してみてください。歯が無い、もしくは入れ歯のため好物の硬い食べ物が食べられないということを。毎日入れ歯の手入れをしなくてはいけないということを。今忙しいという理由から毎日の手入れという手間や毎食の不自由さが生まれてしまいます。結果的にどちらが手間でしょうか。治療費はそういった生活と比べても高く感じるでしょうか。
一番奥の歯は他の歯と少し性質が違いますので治療の際にはその点を考慮していただくことをおすすめいたします。
一番奥の歯を土台のままにすること
基本的に神経を抜いた歯は土台を作り、その上にかぶせものを装着します。来院される方の中には以前の治療で土台まで作りそこで治療終了になっている方がいらっしゃいます。歯は噛み合っている状態が普通ですので歯を削っている治療の途中で中断してしまったりすると噛み合わなくなります。結果歯が伸びてしまうことがあります。
かぶせものを装着するには歯と歯の間にある程度の隙間が無いとかぶせもののスペースがありません。こうなってしまうと土台のままにするしかないのですが、やはりかぶせものを装着しないとその後抜歯の確率が高くなってしまいますのでできれば早い段階でしっかりとした治療をすることをおすすめいたします。
一番奥の歯を抜いてそのままにすること
抜歯後は色々な治療法があるというお話をさせていただきましたが、そのままにしたいという方も多くいらっしゃいます。
- ・延長ブリッジは手前の歯をダメにしてしまうかもしれない・・・
- ・入れ歯は手間がかかるので避けたい・・・
- ・インプラントは費用がかかる・・・
と言った理由が多いように思います。
歯並びにもよりますが前から7番目の歯(一番奥の歯)は7番目の歯同士だけで噛み合っているわけではありません。上の6番目の歯と7番目の歯は下の7番目の歯と噛み合っています。ですので上の7番目の歯を抜歯した場合は下の7番目の歯には影響がないことがあるためそのまま放置しても問題が起きないことがあります。
逆に下の7番目の歯を抜歯すると上の7番目の歯はどの歯とも噛み合わなくなるので次第に伸びてきてしまうことがあります。そうなるとなんらかの治療が必要になってしまうため下の7番目の抜歯後には入れ歯やインプラントといった治療を行う必要があります。
大切な歯のために
以前お世話になった自由診療専門の先生がおっしゃっていました。
「一番奥の歯とその他の歯では難易度が違う。保険点数も大きく変えるべきだ」
「さらに難しい症例は保険診療では治すことが出来ない。」
確かにそうだと思いました。自分の治療の技術が上がると猶更そう感じることが多いです。
一番奥の歯は一番見えにくい歯ですがとても大切な歯です。気になることがあればいつでも歯科検診にお越しいただければと思います。