歯のコラム
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銀歯のつめものをセラミックに替えた方が良い理由
2024.12.26
歯の治療を後回しにしていませんか?
歯の治療は、毎日の食事やおしゃべり、そして笑顔そのものにまで影響する「将来への投資」です。実際のところ、「今はとくに困ってないし、そのうち痛くなったら歯医者に行けばいい」と思ってしまう人が多いかもしれません。日々忙しく過ごしていくなかで、痛みがない歯の治療を考えることまで意識を向かわなくてもしかたないかもしれません。私も患者さんからよく「忙しいから歯医者は後回しになっちゃって…」という声を耳にします。
でももし今のうちに少しだけ時間とお金を費やしていたらこの先の長い人生を明るく楽しく元気よく、歯への不安もなく(もしくは少ない不安で)食事を楽しめるとしたらどうでしょう。痛くなってから歯医者に行く方からすると今までの治療の仕方とは大きく変わってしまうかもしれませんが歯科治療には「今やっておくと後でラクできる」こともあります。既に口の中にある銀歯のつめものやかぶせものをセラミックに替えるという選択です。
銀歯の治療の特徴は?
銀歯は昔からポピュラーな存在で、保険適用のおかげで費用負担が軽く、多くの方が選んできました。ただ、その銀歯が本当に「歯を長く持たせる」ことに貢献しているかというと、残念ながら必ずしもそうではありません。長年使ううちに、どうしても隙間ができやすくなり、その境目から虫歯が再発したりします。金属特有の問題(アレルギーなど)が起こる可能性もゼロではありません。さらに、同じ歯を何度も治し直しているうちに、少しずつ歯が削られ少なくなってしまい、最終的には抜歯せざるを得ないことだってあり得ます。
「じゃあ銀歯ってダメなの?」と思うかもしれません。銀歯が「ダメ」というわけではありませんが、「短期的に安価で機能を回復させる」ことが得意な治療法であって、「歯を長期的に維持する」という観点では限界がある、ということです。あくまで保険診療の枠内で、限られた素材や手法を使うと、どうしても再発リスクはつきまとうものなのです。
一方で、セラミックを選ぶと治療の予後は変わります。セラミックは天然の歯に近い硬さや質感があり、歯との適合精度が格段によいため、境目から虫歯が発生するリスクが下がります。「何年かおきに同じ歯が問題を起こす」負の連鎖から抜け出す手助けをしてくれるわけです。これは口腔衛生学会の調査結果やデンツプライシロナ社の資料でわかりやすくまとめられています。銀歯のつめものが再治療になる平均の期間は5年。銀歯のかぶせものが抜歯になるまで平均7年。セラミックは17年で88%の生存率があります。結果として「できるだけ長く自分の歯を生かす」ことにつながりやすくなります。
またセラミックは見た目も自然で周囲の歯に溶け込むような色合いと透明感があります。銀色がチラリと見えて気になっていた方には大きな違いを感じると思います。実際、セラミックに替えた方が「笑うとき、つい手で口元を隠していた癖がなくなった」とおっしゃることがよくあります。口もとの印象が変わると、自信にもつながるものです。会社の同僚や友人との会話、レストランでの食事、写真を撮るとき——こうした日常のワンシーンが、より自然で心地よいものになるといいなと思っています。
いつ治療するのが良いの?
セラミック治療についてのご質問で多いものとして「いつ銀歯から変えた方がいいの?」というものがあります。答えは「いますぐ全部」です。治療は早期発見早期治療が良いからです。これは歯科に限ったことではありませんが。しかし「全部を一度に替えるなんて、費用も時間もかかるし無理」という声もあるでしょう。確かに、一度に全ての銀歯をセラミックに替える必要はありません。優先順位をつけることが可能です。例えば、明らかに虫歯が進行している歯から始めるとか、笑ったときに目立つ場所から徐々に手を付けるなど、ご自身のペースや予算、ライフスタイルに合わせて計画的に進めれば良いとお伝えしています。
ここで気を付けておきたいのが「状態の悪い歯は、放っておくと痛みやしみが出るばかりでなく、最終的に抜歯が必要になるリスクが高まる」という点です。虫歯は時間とともに進行します。初期段階でセラミックに替えておけば、痛みに悩まされる前に問題の芽を摘むことができます。逆に、「痛くなってからでいいや」と先延ばしにすると、その頃には緊急対応が必要になり、保険でとりあえず処置…といった妥協が増えてしまうかもしれません。その結果また数年後に似たようなトラブルで悩むという繰り返しになりかねず、そんな時私達歯科従事者はやるせない思いを抱くことも少なくありません。
「痛くなったら行く」「治療費をできるだけ安く済ませる」ことを選ぶのも一つの価値観です。ただ、「できるだけ長く自分の歯を大切にしたい」「再治療ばかりの悪循環から抜け出したい」と思うなら、多少コストをかけてでも自費診療を検討する意義は十分にあるのではと思います。セラミックをはじめ、自費診療で用いる素材は再発リスクや耐久性審美性など、さまざまな面で厳選され歯科医師や歯科衛生士が研鑽した技術と経験によって活かされます。こうした質の高い治療は「長期的な安心」「満足度の高さ」をもたらしてくれます。
繰り返しのお伝えになってしまいますが治療のペース配分は自由です。一気に全てを変えなくてもかまいません。「とりあえず一本、特に気になる歯だけセラミックに変えてみる」といったアプローチもOK。その一本で実感できる快適さや安心感が、「他の歯も早めに整えてしまおう」という前向きな気持ちにつながることもよくあります。一箇所セラミックに替えたら、見た目が自然なので他の銀歯も少しずつ変えていく方もいらっしゃいます。
セラミック治療には、もう一つ大きなアドバンテージがあります。それは「歯の手入れが格段にしやすくなる」という点です。銀歯特有の段差や隙間が減ると、毎日の歯みがきやフロス、歯間ブラシなどのケアがスムーズになります。歯周病リスクを下げ、口全体の健康度を高める効果も期待できます。つまり、セラミックへの切り替えは「終わってハイおしまい」ではなく、その後のセルフケアをより実りあるものにするきっかけでもあるのです。
こうした長所を踏まえると、セラミックは単なる「歯を白くする見た目だけのもの」ではありません。将来を見据えた「口腔環境の改善計画」の一部と言えます。「値段が高い」という側面だけ見て躊躇するお気持ちもわかります。でもその分得られるメリットは「安心できる噛み心地」「再治療のリスクが軽減される」「自然な笑顔」「効率的なメンテナンス」など、日常生活を確実に豊かにするものが多いと思っています。
患者さんの中には、「もっと早く知っていればよかった」と後から悔やむケースもあります。まだ痛みが出ていない、今のところ食べるのに困っていないといっても、数年後、十数年後に「この治療をしておいたおかげで助かった」と感じる日が来るのではないでしょうか。人生は長い旅路のようなもの。食べることや笑うことは、その旅を彩るとても大きな要素です。歯が安定して、問題の芽を摘み取った状態であれば、その旅路はより快適になります。レストランで新しい料理に挑戦したり、旅行先で名物を心おきなく味わったり、友達との会話や写真撮影を気兼ねなく楽しめるなど、「歯の心配がない」という自由は思った以上に生活の質を高めてくれます。
セラミック治療をおこなってから気を付けることは?
自費治療であるセラミックは比較的治療費がかかります。もちろん、「お金をかければ何でも解決」と言いたいわけではありません。自費治療にたいする「歯医者のお金儲け主義」といった批判はよくあることです。実際にお世話になっている先生やかつての同僚、学生時代の同級生の勤めている歯科医院の評価を見るとそういった意見を見ることがあります。ただ、自費治療はセミナーに参加したり、専門書を読んだりと歯科医師国家試験のための勉強とは別の勉強が必要なものです。時間や材料、機材といったコストがかかっている以上治療費も高額になりがちです。これは日本には保険診療と自費診療がある以上避けられない問題かもしれません。
口の健康を保つためには日頃のケアや定期検診、歯周病リスクの管理、生活習慣の見直しなども大切です。でも、セラミックという選択肢を使うことで、こうした努力がより報われやすくなるのも事実です。良い材料と精密な技術、そして患者さん自身のセルフケアや歯科医院でのメンテナンスを組み合わせることで、歯の健康と快適さは確実に高いレベルで維持できます。
「今すぐ全部」セラミックに替えるのは理想かもしれませんが、無理をする必要はありません。あなたのペースで一歩ずつ治療していけばいずれ健康な口腔環境ができあがります。千里の道も一歩より。コツコツ焦らずいきましょう。痛みが出る前に、余裕があるうちに、銀歯をセラミックに替えることで将来の自分に「よくやった」と言ってもらえる日に近づいていきましょう。美味しく食べ、心から笑い、心配せず人前で話せる。そんな日々を守るためのほんの少し早めの準備。セラミック治療は、あなたにそのチャンスを届けてくれる治療かもしれません。
気になる方はお気軽にお問い合わせください。LINEでのご相談もできます。