歯のコラム
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質問コーナー2024年秋版 その3
2024.11.22
歯医者に寄せられる質問にお答えします
私は色々な歯科のサイトで質問コーナーに登録しています。たくさんの質問が寄せられるのですが、非常に大量の質問なため応えられるのはほんの一部です。一般的な質問から専門的な質問までありますが、その中からよるある質問の一部についてお答えしたいと思います。
虫歯についてのご質問
Q10 海外在住です。歯のつめものが取れてしまい少ししみることがあります。帰国までこのままで良いでしょうか?
A10 お住まいの近くの歯科医院で治療を受けることをおすすめします。というのも歯は表面のエナメル質という硬くて強い層に守られているのですが、その内部は象牙質というやや柔らかい層があり、その内側に歯の神経があります。象牙質は虫歯の進行が早いため場合によっては歯が痛くなってしまうかもしれません。歯が痛くなってしまえば神経を抜く治療が必要になります。(たまに忍耐で痛みに耐える方がいますが痛みが無くなったとしても治療が必要なことに変わりはありません)神経を抜く治療を行ったあとは再治療ができなければいずれ抜歯になってしまいます。治療は原則早期発見早期治療ですのでつめものが外れた状態で放置するということはリスクがある行為だと言えるでしょう。個人的には海外の治療を受けるのも人生において良いのではと思います。日本の保険診療制度は費用の負担という面で非常に優れたシステムです。海外にも同様な制度がある国もあると聞きますが、多くの国では自費負担だそうです。当然のことながら治療費は高額になります。でも高額な治療をした歯は財産ではないでしょうか?きっと大切にすると思います。またその国の技術についても体験することになると思います。ビジネス系の雑誌や新聞などでは日本の歯科治療のレベルが低いといった記事が書かれることがあります。飛行機代や宿泊費を出してもアジアの某国で治療をした方が良いという内容を読んだ時に複雑な気持ちになりました。ある意味では記事の通りであり、ある意味ではそうではないともいえると思ったからです。物価の違いによって先進的な歯科治療の費用が安く感じるということなのかなと思いました。その国においては非常に高額な治療であっても日本の貨幣価値からすると安く感じるということです。また現地のコーディネーターを雇わなければ日本語が通じないケースもあるのでその点は留意しなければなりません。一方日本の保険治療に置いては費用が比較的安いという最大の利点があります。お金を貯めてから治療をしなくても良いというのは痛みを我慢する期間が短いということですからとても便利だと思います。そして費用も全国一律です。日本には自由診療と自費診療という治療法があります。自由診療は全てを保険適用外で行う治療法です。自費治療は治療によって自費負担と保険診療を併用する治療法です。(私の所属している団体での定義となります)これらの治療は世界的に良いとされている治療を行っているケースが多いため国によっての治療の差はあまりないのではないかと思います。昔のように海外まで研修に行かなければいけないとか、論文が翻訳されるのを待たなくてはいけないということが徐々に減っているからです。ネットで論文をダウンロードし、翻訳AIで日本語に変えることですぐに論文を読むことができますし、海外のセミナーや発表を動画で見ることもできます。日本の第一線を走っている先生達の治療は海外のレベルと遜色ないと思います。少し話が逸れましたが、やはり治療は原則早期発見早期治療ですのでできるだけ早く治療を受けた方が良いと思います。それが難しければ一時帰国の期間をある程度長く取って治療を終わらせてから海外に戻るのが良いでしょう。治療を途中にするというのもまた歯にとって良くありません。
Q11 型どりをして次回かぶせものを付ける予定でしたが気分が変わりキャンセルしたいです。可能でしょうか?
A11 キャンセルできますが場合によっては費用がかかることもありますのでお早めにご連絡した方が良いです。保険診療のかぶせものやつめものは患者さんが来なかった場合一定の期間を過ぎた後に患者さんが来なかったという理由で治療費の一部を国保や社保に請求することができます。当然のことながらかぶせものやつめものは作成を始めた段階で製作料や材料費がかかっています。かといって治療をしないのにその費用を患者さんご本人から頂くことはできません。ですのでできるだけ早く連絡をして製作自体をキャンセルする必要があります。既に製作が進んでいる場合は製作キャンセルができないことがありますが、この場合は歯科医院がその費用を負担することになります。かぶせものやつめものの製作は患者さんと歯科医師の合意の元作成をするのですが、契約書があるようなものではありません。口約束のようなものです。ただ、保険診療というのは薄利多売という側面もあるため製作費や材料費が発生してしまうと赤字になります。歯科医院におけるトラブルでつめものやかぶせもののキャンセルというのは少なくないと思います。自費診療においても同様ですが、患者さんがキャンセルした場合は保険診療と違ってご本人以外から費用をもらうことができません。そのため事前にいくらか手付金を入れていただくか、キャンセル料を設定する歯科医院もあります。ただ、手付金を返して欲しいとかキャンセル料は払いたくないというトラブルが無いかというとこれもまた残念ながらあることです。またキャンセルをしてその後連絡が取れなくなることや、当日来院が無くやはり連絡が取れないということもあります。一方的に歯科医院に不利益があるということで歯科医院としてはできるだけ避けたいことだといえます。綺麗に出来上がったつめものはかぶせものが保管棚にずっと残っているのを見るとやるせない気持ちになりますし、治療にかけた時間も全くの無駄になるので、当院ではできるだけ早めにご連絡いただくことをお願いしています。
歯科医院側でも反省しなければならない点があるとしたら、患者さんが本当にその治療を望んでいたのかが確認できていたのかということや、治療方針についてしっかりと説明できていたのかということです。歯科医師と患者さんの合意ができていなければ治療はできないと思います。ですのでご質問に戻りますと、型どりをしたかぶせものの治療のキャンセルはできるのかということですが、「できる」が費用などは歯科医院に確認が必要、できれば治療前にご自身で方針を決めておき製作がスタートしてからはできるだけ「しない」ほうが良いという回答をさせていただきます。
Q12 痛みがないのですが虫歯と言われました。絶対に治療しなくてはいけませんか?
A12 虫歯については患者さん側と歯科医師側の認識に少しズレがあり、この修正に多少時間がかかるなという実感があります。「痛みがある」と言われたら「神経を抜きましょう」と言いたくなりますが、「神経を抜くんですか?」と驚かれることももちろんあります。
簡単に言えば虫歯の初期は痛みが無いが痛みが出てくると神経を抜く治療になります。神経を抜く治療は「根管治療」というのですが「虫歯の治療」ではなく「神経の治療」です。ですので「痛みがないのに虫歯なんですか?」と言われたら「痛みが無いから虫歯なんですよ」と答えます。「痛みがあったら神経の治療ですよ」ということです。そして恐らく患者さんのイメージとして「痛みがある歯は治療したら痛みが無くなるだろう」と思っているのではと思います。ある意味正しいのですがそれは神経を抜いて歯から神経が無くなったので痛みを感じなくなったのであって、元々の歯の神経が治ったわけではありません。皮膚や筋肉や骨が傷ついた時には痛みが出ますが、次第に治っていき痛みが無くなっていきます。このようなイメージを歯に持たれているのであればそれは違うということです。検診を受けた際に「虫歯がありますよ」と言われたり、ご自身で鏡で見た時に虫歯になっているように見えたら治療が必要です。
その4に続きます。