歯のコラム
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抜歯の3つの原因
2024.02.13
虫歯、歯周病、咬合
私たちの歯科医院では抜歯をできるだけ避けることを目標としています。それは健康な老後を送るために歯の本数が必要だと考えているためです。さらに詳しく言いますと、しっかりと機能している歯の本数が20本以上必要だと考えています。「しっかりと機能している歯」ってなんだろう?と思った方もいるかもしれません。例えば歯の根だけになってしまった虫歯の歯や、歯周病でグラグラと揺れて膿が出ている歯は物を食べるための役になっていません。健康な状態の歯がどれだけあるのかということが非常に重要です。
では平均の歯の本数はどれくらいでしょうか?これは厚生労働省のホームページ等で調べることができますが、75歳の平均の歯の本数が15本とされています。これは多いでしょうか?少ないでしょうか?歯は元々28本あります。おやしらずはその他に4本あります。とすると全体の47%の歯が失われているということになります。私たちはこの失われている歯の本数をとても多いものだと考えていますので出来るだけ抜歯をしないように=再治療の少ない治療をしたいと思っています。
「できるだけ抜歯を避ける」という言葉を聞いた時に「他院で抜歯だと言われている歯が残せるのではないか?」と考える方がいらっしゃるかもしれません。これはイコールとも言えますし、違うとも言えます。症例によってさまざまですが、簡単に言えば「歯科医療のエビデンスに基づいて抜歯が適切だと思われるケースは抜歯をする」「機材や薬剤に制限のある保険診療では残すことができないが自費診療で残せる歯については残す」ということになります。抜歯しかないと診断されている歯を残し続けていると口腔内の環境が悪くなってしまうことが多く、おすすめしていません。しかしながら抜歯という治療は患者様にとってとてもハードルの高い治療ですので気持ちの整理が必要なこともあります。治療についてのご説明をしっかりとさせていただきそのハードルを下げるお手伝いをさせていただければと考えています。
ではなぜ抜歯をした方が良い歯を残しておいてはいけないのでしょうか?色々なケースがあり色々な理由があるため一概には言えませんが、一つ代表的なものに歯科疾患は細菌によってもたらされることが多いというものがあります。虫歯の原因は虫歯の原因細菌によるものです。極端な話ですが、無菌状態では虫歯は発生しません(当然のことですが無菌状態で人が生きることはできませんので仮定のお話です)虫歯の原因細菌は口の中にある栄養になるものを食べながら増殖していくため、虫歯になってしまって抜歯をしなくてはならない歯に沢山の数の原因細菌がいることになります。常に口の中で原因細菌を増殖させている人と、口の中に虫歯がなく適切なブラッシングや口腔ケアを行い細菌数が少ない人ではどちらが虫歯になりやすいでしょうか。
また歯周病についても同様のことが言えます。歯周病は歯と歯肉の境目の歯周ポケットという隙間から炎症がおきます。テレビやネットで見る芸能人の歯肉の色に違和感を感じたことも多いのではと思います。またご家族ご友人仕事仲間や取引先などの人から口臭を感じることもあるかもしれません。歯肉の色が悪く出血していることになぜ本人が気づかないのだろうと思うこともあるかもしれません。歯周病の原因細菌は神経の伝達を阻害する物質を産生するという特徴があります。つまり歯周病が重度になっても本人は痛みを感じにくいのです。非常に厄介な特徴だと思います。本人に自覚症状がないため歯周病について伝えても治療のモチベーションがあがらずに放置してしまったり、抜歯しないでそのままになってしまうことも少なくありません。歯周病の原因細菌もできることなら口腔内から全て取り除きたいと考えるかもしれませんが、原因細菌は常在菌という常に存在する細菌の為完全な除去ができません。その為抜歯が適切だと考えられる重度歯周病の歯については抜歯をできるだけ早くすることが大切です。
自覚しにくいかみ合わせの異常について
生まれつき歯並びが悪く子供の頃に矯正をしたというお話はよくあるのではと思います。最近ですとコロナウイルスの流行からマスクを付ける方が増えたこともあり、他人に気付かれにくいという理由で矯正をした方も多いです。これは見た目を良くしたいという審美的な問題から行うケースが多いのではと思います。矯正の大切な目的として機能の回復ということがあります。簡単にいくとしっかり噛めていないものを噛めるようにするということです。
かみ合わせに問題があるケースで他のものを挙げてみますと、歯を失ったことによって力のかかり方が変わってしまうものや、虫歯の治療でつめものやかぶせものを付けたことにより、元々のかみ合わせと変わってきてしまったというものがあります。虫歯の治療や歯周病の治療は1本の歯に対して行われるというイメージを持たれている方も多いかもしれません。実際に保険診療ではかみ合わせ全体を診断するという項目がないため基本的には1本に対してどんな治療をしたかということで治療費が発生します。
しかし、かみ合わせというものは全ての歯でどのように噛む力を受け止めるのかということが非常に大切になるため1本の銀歯の治療をおこなったために全体の力のバランスが崩れてしまうことがあります。想像しにくいことだと思いますが、例えば右下の奥歯に銀歯のつめものを入れたが少しつめものの高さが高いような気がして噛みにくいという違和感があったとします。自然と慣れてくるのですが、自然と逆の左側で食べ物を良く噛むようになってしまうことがあります。詰め物の高さが高いと噛んだ時に小さな痛みが出たり、噛みにくかったりするためです。結果的に逆側の左の歯に強く力が掛かるようになって異常が起きてしまいます。
そして左の歯をまた治療し、つめものやかぶせものの治療を行うのですがやはり高さに問題があり他の歯に力が掛かるようになります。繰り返していくとかみ合わせに乱れが生じてしまうというわけです。この段階で歯科医院に来院される場合、治療箇所は複数になるため治療の費用が大きくなり、治療期間も長くなります。保険診療では治すことが困難なケースと言えるかもしれません。
歯も身体の一部だということ
歯は硬い組織なので臓器の様に考えていない方も多いと思っています。例えば家や家電のように壊れたら修理が出来るというように考えているように感じることがあります。しかしやはり同じ身体の一部ですからコンクリートやプラスチック、鉄とは違います。何度も治すことができません。心臓の病気になったら心臓をいたわる生活をするでしょう。肝臓に負担をかけてしまって病気になったら食事やお酒の摂取を考え直すと思います。
歯の治療も同様に原因に対して対策としなくてはならないのですが、それは歯科医院での治療だけではありません。日々のセルフケアをしっかりと行い、セルフケアがしっかりと行われているかの確認を歯科医院で行い、異常があれば再発のリスクの少ない治療を行うということが必要だと私たちは考えています。
口腔状態と身体の状態の関連
最後にお口の健康と身体の健康が関連していると考えられていることについてご紹介いたします。
- ・転倒リスク
- ・認知症
- ・糖尿病
- ・すい臓がん
- ・早産 低体重児出産
- ・骨粗鬆症
- ・腎炎
- ・心筋梗塞
- ・サルコペニア
- ・味覚障害
- その他色々
様々な身体の病気のリスクの軽減のために口腔状態を健康にして健康な生活、健康な老後を送れるように一緒に取り組んでいきませんか?ご連絡お待ちしております。