歯のコラム
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フッ化物の基礎知識
2023.11.17
フッ化物は虫歯予防にとって、基本といっても過言ではない存在です。自然界に広く存在するフッ素は、単体ではなく、フッ化物という化合物の形で私たちの生活に役立っています。皆さんもテレビCMや広告、さまざまなオーラルケア製品のパッケージにフッ素配合といった文言を見たことがあるのではないでしょうか。お口の中で、フッ化物は虫歯菌に負けない強い歯を作る助けとなり、歯の再石灰化を促し、口内の酸性化を防ぐことで虫歯の予防に貢献します。フッ化物には素晴らしい力があるので、毎日のケアに上手に取り入れて、健康な歯を守りましょう。
ステファンカーブとは
人間が食事を摂ると口の中で糖を養分として口内細菌が酸を作り出します。元々口の中はほぼ中性になっています。産生された酸によって口の中が酸性になると歯の表面のエナメル質を溶かしていきます。(pH5.5以下)表面のエナメル質は硬くて強い層ですが、その内部の象牙質はやや柔らかい層なので、エナメル質に穴が開くと内部の象牙質はどんどんと溶けていきます。(pH6.0~6.2)ですので見た目では小さい穴が開いているだけの虫歯でも削ってみると内部が大きく虫歯になってしまっていることも多いです。
人間の身体というのはとても不思議で色々なメカニズムによって健康を保つようにできています。口の中で行われている作用として脱灰と再石灰化というものがあります。脱灰というのは酸によって歯の表面のエナメル質のミネラル分が失われることです。再石灰化というのは唾液に含まれるミネラルによって脱灰した歯の一部が元の状態に戻ることです。つまり一日のうちに脱灰と再石灰化が何度も繰り返されることによって歯の健康が保たれています。
ステファンカーブという曲線を表した図があります。元々中性になっている口の中ですが、飲食をすることにより急激に酸性に傾いていきます。そしてゆるやかに時間をかけながら唾液の作用によって中性に戻っていきます。この中性から酸性、そして中性へ戻る曲線をステファンカーブといいます。朝食から昼食で考えてみます。
朝食を摂り歯みがきをして出勤します。口の中は酸性です。徐々に唾液の作用によって中性に戻って行き、昼食の時間になる頃には中性になっています。昼食後は歯みがきが出来ませんでした。酸性になった口の中ですが、やはり唾液の作用によって時間をかけて中性になっていき、夕飯までには中性に戻ります。夕食後も同様の流れになります。一日の中で中性になっている時間が長いため歯の表面のエナメル質に影響がありませんでした。
別のパターンです。リモートワークのため人と会うことも無いので朝食を食べて歯を磨きませんでした。おやつを食べながらコーヒーを飲み仕事をします。おやつを食べたせいで12時におなかが空きませんでした。ジュースを飲みながら14時くらいまで仕事をしました。この間、唾液の作用で口の中は中性に戻ろうとするのですが、頻繁に飲食があったため酸性のままの時間が長く続きます。遅いお昼を食べている途中で仕事の打ち合わせが入ってしまいました。昼食を中断して打ち合わせを終え昼食を再開したため昼食を摂っている時間がとても長くなってしまいました。夜は友人と飲み会がありました。18時から飲み始めて3次会が終わったのは0時を過ぎた頃でした。帰宅後は眠くなってしまいそのまま歯を磨かずに寝てしまいました。一日を通してみると飲食をしている時間が長いため口の中は酸性になっている時間とても長くなってしまいました。一日ですぐに虫歯になるわけではありませんが、このような日が続くとエナメル質が溶けていきます。
フッ素の作用
フッ素の作用として重要なことの一つに再石灰化を促すというものがあります。日々唾液によって再石灰化は行われていますがこの作用を強化します。その他にもフッ素の作用として歯の表面のエナメル質を強化して酸で溶けにくくしたり、虫歯の原因細菌の働きを弱めて酸の産生を抑える作用もあります。
フッ化物の歯科医院での活用法
フッ化物歯面塗布とは、歯科医院で行われる虫歯予防処置の一つです。この処置では、フッ化物溶液を直接歯に塗布し、強い歯の形成をサポートします。特に子どもたちの虫歯予防に古くから活用され、効果を最大限に得るためには年に2回以上の定期的な塗布が推奨されています 。歯科医師や歯科衛生士によるこの丁寧な処置は、私たちの歯を虫歯から守る強い盾となるのです。フッ化物を用いたプロのケアで、健康な歯を維持しましょう。
歯科医院では歯の脱灰している部分にフッ素の塗布を行います。フッ素が含まれたジェルやバーニッシュという粘着質のフッ素が含まれた薬剤を塗っています。特にバーニッシュは粘着質のため歯に塗ってから長時間フッ素が留まるため非常に効果があります。数時間飲食ができないためお食事のご都合を付けた上で塗布しています。
家庭でのフッ化物使用法
家庭でのフッ化物の使い方には、フッ化物洗口があります。これは、低濃度のフッ化物水溶液で口をすすぐシンプルな方法で、フッ化物を歯に直接作用させることができます。歯みがき粉に含まれるフッ素より全ての歯にまんべんなくフッ素を作用させることができるため非常に効果があります。洗口剤も優しい風味の物が多いのでお子様でも使うことができますし、大人も日々のお手入れに取り入れて家庭で簡単に虫歯予防を行うことができます。
もう一つはフッ化物入りの歯みがき粉です。海外ではフッ素が多く含まれた歯みがき粉が売られていますが、日本では薬事法により1450ppmのフッ素が含まれた歯みがき粉が一番濃度の高い歯みがき粉です。有名なものですとチェックアップやクリンプロ、シュミテクト、クリニカなどがあります。フッ素入りの歯みがき粉を購入する際に注意することが1点あります。フッ素配合と書かれていても数値が書いていないものが多くあります。これらがどれくらいフッ素が含まれているかはメーカーのお客様センターに問い合わせても教えてくれないことがあります。フッ素濃度が低い歯みがき粉は予防効果が低いためできれば1450ppmと記載のある歯みがき粉を選ぶと良いでしょう。
また歯みがき粉には色々な種類があり、様々な成分が含まれています。価格の幅も広いです。フッ素濃度が1450ppmの歯みがき粉の中でも価格が数倍違うものもあるため、含まれている成分がどのような効果があるか調べてみると面白いかもしれません。そして歯みがきをした後はできるだけ水ですすぎすぎない方が成分が口の中に残ります。少量の水で1回程度のうがいにとどめておくことをおすすめいたします。歯みがき後はできるだけ食べ物を摂ったり砂糖の入った飲み物を飲まないようにしましょう。目安として2時間は飲食を控えた方がフッ素の効果が残ります。再石灰化を促すために気を付けることをおすすめいたします。
スタッフの一日のセルフケアの一例
口腔内の状態が違う為セルフケアも人それぞれです。元々の状態が悪ければケアも気をつけなければならないことが沢山ありますし、状態が良い人には過剰なセルフケアは必要ありません。あるスタッフの一日のセルフケアの流れをご紹介します。
起床後 歯みがき
朝食後 キシリトールタブレット 歯みがき フッ化物洗口
昼食後 キシリトールタブレット 歯みがき
夕食後 キシリトールタブレット フロス 歯みがき フッ化物洗口
フッ化物を一日数回に分けて歯に作用させることや酸性になりすぎないように極力間食を避けています。
フッ素の使い方について少しでも興味を持たれましたらお気軽にスタッフまでお声がけください。またしっかりと予防歯科を行いたいという方には予防歯科の検査についてもお伝えいたします。