歯のコラム
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根管治療の成功率を高めるために必要な器具や機材について
2023.03.13
こんにちは。先日歯科器材の専門業者さんで展示会があるということで行ってまいりました。今回は特に根管治療の機材が多いという事で楽しみにしていました。
根管治療ってどんな治療?
根管治療というのは神経を抜く治療のことです。また一度神経を抜く治療をした歯に再治療が必要になった際に行う治療のこともいいます。
失った歯を補うインプラント治療や、銀歯をセラミックに変える治療はイメージが付きやすいかもしれません。一方で根管治療は歯の内部の治療なので患者さんにとっては見たこともないことが多いのではないかと思います。イメージもつきにくくて当たり前だと思います。しかし、根管治療はその性質上非常に重要な治療です。少しご説明したいと思います。
虫歯の治療はどのように変化していく?
健康な歯が虫歯になる場合、初めは小さめな虫歯を見つけることが多いと思います。特に症状も無く、もしくは症状も弱くこの程度で歯医者に行く必要があるのかと迷うこともあるかもしれません。しかしある程度進んだ虫歯は削らなければいけないのでCRという歯科用の樹脂を入れる治療を行うことが多いです。光を当たると固まる粘度のような白い素材なのですが、とても便利で1日で治療が終わることが多いです。
ただCRは長持ちする素材ではない為、いずれ再治療になります。保険の銀歯のつめものへのやり替えが必要になるわけです。また銀歯のつめものも長期間使用できる素材ではないので再治療が必要になります。この際に神経を抜くことになるのですが、神経を抜いた歯はその後何回も治療が出来るわけではないため、ここでしっかりと治療を行わないと抜歯になってしまうわけです。
根管治療の難易度は?
歯の根の形というのは人それぞれで治療しやすい形と治療が難しい曲がっている形とがあります。現在の保険診療では歯の神経の治療をする治療費は難易度によって変わるような制度ではありません。極端な話、歯科大学を卒業したての歯科医師が治療できるような簡単な歯も、長年技術の研鑽を続けた歯科医師が性能の良い器具や機材を使わなければ治療できない困難な形の歯も同じ治療費です。これが根管治療を複雑にしている要因の一つと言えるでしょう。
歯科にまつわるニュースは色々とありますが、日本の治療レベルと海外の治療レベルを比べるような記事を見ることがあります。記事ですから目を引く見出しが無いといけないのだとはわかっているのですが、「日本の根管治療のレベルは低い」だとか「海外で歯科治療をする方法」などの記事は歯科医師として釈然としないこともあります。ただそういった記事で紹介されている海外の治療内容はほぼ真実だと思います。歯科用の顕微鏡や拡大鏡を使って根管治療を行う。治療回数が少ない。再発が少ない。と言った内容なのですが、実はこれは日本でも行われている治療です。1点つけ加えるなら「自由診療」で行っている医院が多いということです。私は根管治療のセミナーにも歯科用の顕微鏡を使う治療のセミナーにも通っていますし、講師の先生の治療を研修させてもらいに遠方に出かけたりしています。自由診療専門の歯科医院に数か月研修に通っていたこともあります。みなさん素晴らしい技術をお持ちです。
治療に使う歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)とは?
例えば歯科用の顕微鏡ですが、持っていなくても歯科医院を開業することは出来ます。歯科用の診療チェアやレントゲン、機材の滅菌機などが無い場合は開業することができません。つまり保険診療を行うために必須の設備ではないということです。歯科用の顕微鏡は海外のメーカーも日本のメーカーも沢山の種類があります。性能によって費用も違います。海外のメーカーの高級車と同じくらい高価で高性能の物もあります。こういったものを用意して実際に使用して根管治療をするということは根管治療について力を入れているということに他なりません。(笑い話ですが歯科用の顕微鏡を買ったはいいがあまり使わず、洗濯物の物干し竿代わりになってしまっている歯科医院もあります。)
根管治療は簡単に言えば歯の根の管の中にある神経を抜き、歯科用のやすり(ファイル)で形を整えてきれいに洗浄し、空洞をしっかりと埋め、外部から細菌が入らないようにする治療です。歯科用の顕微鏡はこの細い管の中を見ることに使います。そして使用するファイルにも色々な種類、性能、価格、のものがあります。高性能で高価なファイルは保険診療で使うファイルとは金属の材質が違います。困難な形の歯でも治療の成功率を上げることができるわけです。しかしどうしても材料費がかかってしまうため、材料費だけで治療費を上回るという理由から保険診療で使うことができないという現状があります。
また根管治療後はかぶせものを装着するのですが、保険診療で使うことが出来る素材と自由診療で使うことができる素材ではやはり性能が違います。せっかくしっかりとした根管治療を行った歯には性能の良いセラミックやゴールドといったものでかぶせものを作りたいというのが治療側の気持ちです。
展示会で買ってしまったもの
話がそれてしまいましたが、先日参加した展示会では歯科用のやすり(ファイル)の良いものと、ファイル用のハンドピース(ファイルを装着して自動で回転させる器具)を見るのが目的でした。ファイルは価格によって素材が違うというお話を先ほどしたのですが、素材がニッケルやチタンの合金で出来ているものがあります。そのままニッケルチタンファイルというのですが、通常のファイルの金属よりもしなりがあり歯の根の細い管に沿って曲がって奥まで入っていくので、治療が難しい形をしている歯の治療も行うことができます。そしてニッケルチタンファイルを装着するハンドピースにも色々な特徴のものがあります。今まで使っていたものの他に違う特徴のものが欲しいと思っていたのですが、とても有名なトライオートという機種のデモ体験を行った結果とても使いやすいため購入しました。
その他にも一緒に使うことができるファイルや管の中を埋めるための薬剤も購入してしまい、思ったより出費してしまうことになりました。
抜歯をさけるためには
神経を抜いた歯は次に何か起きたら抜歯になってしまうということも多いので、できれば自分の歯を抜かなくて済むようにしっかりとした治療をするように考えていただければと思います。いざ抜歯となった時に慌てて残せる方法は無いかと質問してくる方もいるのですが、手遅れの場合はどんな名医でも抜くしかありません。抜きたくなくて抜かないでいてもいつか勝手に抜けてしまいます。出来るだけ早く治療にとりかかることをおすすめいたします。
どのような器具を使って治療しているか気になる方は治療前にお声がけいただければご説明いたします。
※なお説明した器具や機材、薬剤をつかうことが出来ない治療もございますのでご了承ください。